本記事では、会社案内のパンフレット・リーフレットを自社で作る方法について詳しく解説します。
以下のような方におすすめの記事です
- テンプレートではなく、オリジナルの会社案内を自社でデザインしたい
- デザインの仕事に興味があるので、練習してみたい、コツを知りたい
- 仕事でWEBやUIを作っているのでデザイン自体はできるが、印刷物の注意点を知りたい
目次
パンフレットの用途を決める(想定読者を考える)
まず、以下の内容をあらかじめイメージしておきます。
イメージすること | 例 |
---|---|
いつ、どこで使用するか | ・展示会でラックに置き、見込み顧客に取ってもらう ・営業マンが携行し、商談時の台本にする ・店舗に置いて、顧客に持ち帰ってもらう |
誰が読むか(想定読者) | ・見込み顧客 ・すでに取引のある会社の担当者 ・出資担当者 |
想定読者の属性 | ・30~40代、女性、子育てをしている ・決済権がある人、50~60代 ・高校生、大学生 |
これらを具体的にイメージしておくことで、明らかに間違った仕様にならずに済みます。
用途と仕様が合っていない例
- 50~60代向けなのに、字が小さい
- 携行したいのに、ページ数が多くて重い・かさばる
- ラックに入れる(下半分が見えなくなる)のに、上部が写真だけで何なのかわからない

用途の先にある「目的・結果」まで考えられるとベストですが、デザイナーでない方がそこまで検討するのはかなり難しいと思います。デザイナーでも悩むので…
記載する内容を決める
会社案内に掲載する情報をまとめます。一般的には、以下のような情報が掲載されます。
会社案内パンフレットによく掲載される情報
- 表紙
- 会社名、ロゴマーク
- 「会社案内」の記載
- 目次
- 会社概要
- 正式名称
- 設立年月日
- 資本金
- 代表者
- 従業員数
- 株主構成・系列
- 事業内容
- 本社所在地
- 代表者挨拶、代表者の顔写真
- 事業内容
- 代表的な製品やサービス
- 主要実績
- 特長
- インフォメーション
- 経営理念
- 組織図
- 沿革
- 社屋写真
- 連絡先
- 代表電話番号、電話受付時間
- FAX番号
- 住所
- アクセス(〇〇駅徒歩X分、地図)
- 裏表紙
- 発行年月、第X版
裏表紙の「発行年月」は、デザインを変えずに内容だけ更新した場合の判別用です。

親会社やグループ会社がある場合は、グループ全体でのデザインルールや、ロゴの表示規則があるかもしれません。作り直しを避けるためにも、確認をとってから着手するのが安全です。
業種によって必要項目は変わる
例えば、機械や家具のメーカーであれば商品の高解像度写真がほぼ必須です。ITソフトウェア開発ならば写真の代わりにスクリーンショットが載りますし、対人サービス業はサービス提供中の写真が必要です。一目で具体的に自社の商品やサービスがわかる画像を用意しましょう。
自社のみでサービスが完結する業種なら自由に写真を使えますが、建築系やメディア系など、知名度の高いモノに携わっている場合は、画像の使用許可をとってから掲載します。
どうしても良い写真が撮れなければ、フリー写真を使用することもあります。外国人関係の仕事でない場合は、なるべく日本人の写真を探します。中国人・韓国人・ベトナム人などはアジア人なので似ていますが、顔の雰囲気や化粧・服装が日本人と結構異なるため、違和感はあります。
強みや理念に合わせて、打ち出すイメージを考えましょう。精密性やクオリティを強調するのか、親切なサービスをアピールするか、事業自体の社会貢献性を訴えるかでは、大きく枠を取るべき箇所が変わります。
「会社案内=採用案内」はかなり厳しい
採用パンフレットの場合、会社案内とは構成やデザインが大きく変わりますので「会社案内=採用案内」はかなり厳しいです。
そもそも会社案内は取引先や銀行に「ちゃんとした会社だな」と思ってもらうために出すものですから、高校生や大学生に配って興味を持ってもらうものとは中身も雰囲気も変えてしかるべきです。
内容の変化としては、組織図や沿革、特長・実績などの「銀行に出資してもらうための情報」や「取引先に営業するための材料」を削り、代わりに「先輩インタビュー」「社内の写真」「一日の流れ」など、入社後の雰囲気がわかる情報を載せます。
それも単に文章を並べるのではなく「数字でわかる株式会社〇〇」「漫画にする」「図表にする」「雑誌風に編集」など、ポップに楽しく読めるように情報を加工することが多いです。よって、全体的な制作難易度や情報収集の手間は、採用案内>会社案内になりがちです。

ちなみに会社案内と採用案内を同時に作れば、素材を流用できたり、取材がまとめてできるので、タイミングが合わせられるなら一緒に作るのが楽だと思います。
ページごとの内容を決める
サイズ・向きについて
サイズは基本的に A4定型サイズ・縦向き・左開き(横書き)がおすすめです。
A4サイズより多少小さいのは許容範囲ですが、大きいと色々な問題が発生します。まず、標準的なクリアファイルやカバンに入らなければ折らざるを得ませんが、相手方としては「折る=失礼なことをする=弱みの発生」です。サイズだけで「気遣いのない会社だ」と思われかねません。
また、たいてい他社の会社案内と並べて収納されますから、並べる時にサイズが1つだけ違うと「これだけ出っぱって邪魔だな」となり、最悪捨てられてしまいます。
向きは縦向きが多いです。横向きもダメではないですが、他社パンフレットと並べると「横から見た厚み」のようになって取りづらいので、理由がなければ非推奨です。
ページ数の考え方
ページ数は用途によって変動します。冊子の場合は4ページ刻み、折りパンフレットは4・6・8ページです。
イベント等での大量配布用 | 4〜8ページ |
営業マンの携行用(簡易な台本にもなるもの) | 8〜12ページ |
じっくり検討するための正式版 | 12〜20ページ ※20ページを超えると会社案内というよりIR資料やカタログに近くなってくる |
用途別に何種類もパンフレットを準備している会社もありますが、特に用途が定まっていなかったり、とりあえず1つ作ってみるという場合は、8ページか12ページで作っておけば大丈夫です。
折り方の考え方
1枚の厚紙を折るといっても、様々な方法があります。

上の4つは代表的なもので、もっと複雑な折り方もたくさんあります。ただ、デザイナーでない方が作成する場合は、二つ折りか中綴じ冊子(ホチキス留めの冊子)にすることをお勧めします。
というのは、複雑な折り方のパンフレットを効果的に作る難易度が案外高いのです。折り方=開く順番・読む順番のコントロールで、ページを開くことで新しい場面が展開するようなイメージです。
上記にある「外三つ折り」や「観音折り」は、ぱっと見カッコいいのですが、慣れていないとページ位置と読む順番の関係をつかむのが難しいです。入稿時のテンプレートも、ページごとの幅が数ミリ違ったり、複雑な指示があって最初は混乱します。
また「ぱっと開いた瞬間、鮮やかにイメージ転換させるため、背景を赤に!」などの大技は、プロがやれば大丈夫ですが、印刷の仕組みがある程度わかっていないと意図しない色(思ったよりドギツイorくすんでいる等)になる危険があり、かなりシビアです。
複雑な折り方のデザインは制作難易度が高いため、まずはスタンダードなものとして、4ページであれば二つ折り、8ページ以上であれば中綴じ冊子で作ることを推奨します。
ページに内容を割り当てる
ページ数をイメージしたら、ページに内容を割り当てます。手書きでもExcelでも何でもよいので、長方形の枠をとって内容をざっくり書き込み、構成を考えていきます。
見せ方はいろいろありますが、スタンダードな構成は以下のようなものです。
会社案内パンフレットでよくあるページ構成例
ページ | 内容 | 内容の詳細 |
---|---|---|
P1 | 表紙 | メインビジュアル、会社名、「会社案内」 |
P2 | 会社概要 | キャッチコピー、会社概要、代表挨拶 |
P3 | 事業内容 | 強みや特徴の説明、製品やサービスの説明 |
P4 | 裏表紙 | アクセス、連絡先、発行年月 |
ページ | 内容 | 内容の詳細 |
---|---|---|
P1 | 表紙 | メインビジュアル、会社名、「会社案内」 |
P2-3 | 会社概要 | 会社概要、経営理念、沿革、社屋写真、代表挨拶 |
P4-5 | 事業内容(1) | キャッチコピー、強みや特徴の説明 |
P6-7 | 事業内容(2) | 製品やサービスの説明、実績紹介 |
P8 | 裏表紙 | アクセス、連絡先、発行年月 |
ページ | 内容 | 内容の詳細 |
---|---|---|
P1 | 表紙 | メインビジュアル、会社名、「会社案内」 |
P2-3 | 会社概要 | 目次、会社概要、経営理念、代表挨拶 |
P4-5 | 事業内容(1) | キャッチコピー、強みや特徴の説明 |
P6-7 | 事業内容(2) | 製品やサービスの説明 |
P8-9 | 事業内容(3) | 実績紹介 |
P10-11 | インフォメーション | 沿革、社屋写真、アクセス、連絡先 |
P12 | 裏表紙 | 発行年月 |
使用ソフトを選ぶ
パンフレットは名刺やTシャツと違ってページ数があるため、簡易的な画像配置アプリでは作成が難しいです。大きめサイズのレイアウトに対応していて、画像貼り付け位置に制限がなく、長文をボックスで配置できるソフトウェアが良いです。
プロ向け おすすめソフト
- Adobe Illustrator
- Adobe InDesign(20-30ページ以上の場合)
- Affinity Designer
アマチュア向け おすすめソフト
- PowerPoint
- Canva
- Adobe Express
データの作成前に発注候補の印刷会社をいくつかチェックして、印刷可能なデータ形式を確認しつつ、入稿テンプレートがあればそれを使用するのが確実です。
デザインを作る
ページ割り当ての段階でしっかりと内容を吟味し、必要な原稿や写真を揃えたら、フォントやレイアウト、配色で自社らしさや強みを表現していきます。
名刺の作り方記事で解説した通り「良いデザイン」は業種やアピールポイントによって変わります。
例えば、老人ホームや買い物代行サービスの場合、高齢者が読むことが想定されますので、文字は大きめ・優しい色味、読む順序がわかりやすい構成にする必要があります。
逆に採用パンフレットであれば、高校生・大学生が読むので小さい文字や強めの色でも大丈夫でしょう。
注意点として、サービスや商品の購入者が若くても、営業先(パンフレットの展開先)が購入者ではなく取扱会社の場合は、小さい文字は避けます。サービス導入の意思決定者は多くの場合、中高年層だからです。他の例として、幼児向けの玩具は、使用者は幼児ですが購入者は大人です。このように使用者と購入者(読者)の属性が違う場合もよくあります。

垢抜けさせるレイアウト方法としては、1ページ単位にこだわらず、見開き2ページをまたぐように写真やキャッチコピーを大きく入れるとカッコいいです。
ページをまたぐ要素の注意点として、折り目の部分に人物の顔や文字が被らないよう調整が必要です。写真を大きく入れる場合も、解像度が十分かどうか確認しながら進めます。
また、フォントのサイズや太さにはメリハリをつけることで、全体的にグッと引き締まります。フォントの数は2〜3種類に絞り、小見出しと本文は同じフォントの太さ違いで切り替えると読みやすいです。

さまざまなレイアウト方法がありますので、画像検索でひたすら数を見てアイデアを探すのも良い方法です。

私はデザインの仕事を始める前に、大量のデザイン画像を見て「デザイン頭」に切り替えます。通常の思考とデザイン制作は、脳の使い方が違う気がします。
まとめ
会社案内パンフレットのデザインを、自社で作る際の注意点やコツをまとめました。
復習として、大事なポイントを再掲します。
本記事のまとめ
- 用途や想定読者に合わせた仕様にする
- A4サイズ・縦向き・左開き(横書き)で作成する
- とりあえず作ってみるなら、8ページ or 12ページの中綴じ冊子がおすすめ
- デザイン制作の前にページ構成を考える
- 印刷会社を事前に調べて、入稿用テンプレートを探す
私はデザインを作るのが楽しいですが、楽しくなくて辛い方は代わりにやりますので、お気軽にご相談くださいね。