本記事では、オリジナルデザインの名刺を自分で作る方法について詳しく解説します。
以下のような方におすすめの記事です
- テンプレートではなく、オリジナルの名刺を自分でデザインしたい
- デザインの仕事に興味があるので、練習してみたい、コツを知りたい
- 仕事でWEBやUIを作っているのでデザイン自体はできるが、印刷物の注意点を知りたい
目次
前提:どんな名刺デザインにするべきか

使っていて気分が上がる、おしゃれな名刺がいいな!
おしゃれな名刺にしたい、かっこいい名刺を出したい!とワクワクするのは非常に良いことです。デザインの楽しさの根源ですから、その気持ちは大切にしましょう。
とはいえ、仕事で使う名刺ですから実利も考えなければなりません。実利とは、仕事内容と名刺デザインのイメージがかけ離れないようにすることです。
例えば、官公庁から受注しているシステム会社があったとして、そこの名刺が以下のような感じだったら、どうでしょうか。

「おしゃれ」の一種ではありますが、ぱっと見、お堅い系のシステム会社には見えません。単に意外なだけならまだ良いのですが、技術力が高くなさそうに見えますし、役所の仕事の進め方もわかっていない気がしてきます。つまり「堅いシステム会社としての」イメージは悪くなります。
逆にこれが、手作りのパン屋さんとか、無機栽培にこだわる飲食店、あるいは肌に優しい化粧品の製造だったら、どうでしょうか?

システム会社では悪い印象を与えていた名刺も、これらの業種なら「おいしそう、健康になれそう」「身体に負担が少なそう」といった良い印象になります。
つまり、業種やセールスポイントによって「良いデザイン」はかなり変わる、正反対になることもある、ということです。
やってはいけない名刺デザインの例
- 安さが売りのビジネスで、高級感を出す
- 品質が売りのビジネスで、ゴテゴテPOP感を出す
- 健康がテーマのお店で、サイバー系なスタイリッシュ感
- スピード命の商売で、牧歌的なイラスト入り
- 厳格な仕事内容で、角丸加工をする
上記のデザインに適している業種の例
- 高級感 →品質が売りのブランド
- ゴテゴテPOP →安さが売りの商店
- サイバー系 →システム開発会社
- 牧歌的イラスト→ハンドメイド作家
- 角丸加工 →幼児教室
上記のように、ビジネスとデザインには相性があります。
そして、デザインの方向性は名刺だけでなく、紹介パンフレット、ホームページ、SNSなど全てで共通させるのが望ましいです。共通していなければ、ぱっと見同じ会社に見えず、顧客を混乱させる恐れがあるためです。
※例外として、値引きセールの単発チラシだけはハイエンド寄りの店でも「安っぽい」要素を入れることもあります。
実際の運用では、テストをしながら徐々に揃えていくことも多いと思いますが、最終的にはビジネスに最高に似合うデザインにまとめていく予定でいてください。
記載する内容をまとめる
まず、名刺に載せる情報をまとめます。一般的には、以下のような情報が掲載されます。
一般的に名刺に掲載される情報
- 氏名
- 会社名、屋号
- ロゴ
- 部署、役職
- 所在地
- 電話番号
- メールアドレス
- WebサイトのURL
- SNSアカウント
掲載する情報の量と、表現したいイメージの組み合わせによって、レイアウトの方向性や裏面の使い方が自然に定まってきます。
例えば、個人で仕事をしている方で部署名や住所の記載がなく、情報が少ない場合があります。シンプルなイメージのサービスや作風ならば、それが最適なこともあります。
ただ、アグレッシブな職種(大工職人、スポーツ系、ミュージシャンなど)や個性的な作風の場合は、印象が噛み合わず違和感が出ます。そういう場合は、仕事にまつわる写真やイラストを入れたり、キャッチコピーを追加して情報量を増やします。
逆に、グループ子会社だったり認証ロゴや資格がたくさんあって、情報量が非常に多い場合もあります。そういう時は、逆に情報を取捨選択します。
「もうこれ以上削れないよ」という場合もありますが、プロのデザイナーはそこで諦めず、文字情報を絵に変換して表現したり、階層構造に整理することで、ぱっと見の情報量を減らせないか考えます。
個人的には、この「情報を損なわずに、情報量を減らす」や逆に「少ない情報から、見応えがあるように膨らませる」がデザイナーの一番の仕事だと思っていますので

作ってはみたものの、情報量が多すぎる/少なすぎる・・・
という場合は、デザイナーに依頼した方が良い可能性が高いです。
名刺のサイズや紙の種類を決める
名刺のサイズ・向きの選び方
一様に思われる名刺のサイズですが、実は色々な種類があります。
日本の標準サイズ | 55×91mm |
欧米の標準サイズ | 51×89mm |
女性名刺(3号名刺) | 49×85mm |
二つ折り名刺 | (横)182×55mm (縦)110×91mm |
三つ折り名刺 | (横)271×55mm (縦)165×91mm |
一般的なビジネス名刺であれば、標準の55×91mmサイズが無難です。見た目の話だけではなく「渡した相手の名刺ケースにジャストフィット」という意味でも悪目立ちせず親切です。
女性名刺は「自分が女性だから・女性社員が多いから」という理由だけでは使用しない方がいいです。ママ友同士のお稽古事や水商売など、ちゃんとしたビジネスではないイメージを持つ方もいるためです。
二つ折りや三つ折りの名刺は、クリエイターが簡易的な作品集として利用することがあります。展示会やレジ横での大量配布などで「作品集やカタログよりはコンパクトだから、気軽に持ち帰ってね」という効果を狙う場合以外は、かさばる=相手の名刺ケースを圧迫するので、基本的には避けた方が良いです。
名刺の向きは業種やデザインによって合う合わないがあります。和風なお店なら縦書きが似合うことも多いです。
実用性の観点でいうと、横向きは英語が書きやすいです。近年はメールアドレスやWEBサイトのURL(長めのアルファベット)が載るので、横向きの名刺が多いです。
紙の厚さ・種類の選び方
最も一般的な名刺の紙厚は、180kgです。紙の厚みはkgで表します。

kgの由来が知りたい人はグラフィックさんの解説ページを読んでみてね。
あまりに薄いと、そもそも名詞として認識されにくくなりますし、ぐちゃっと折れ曲がる危険性が高くなります。逆に厚すぎれば名刺ケースを圧迫し、価格も上がります。160〜220kgぐらいの間で選んでいただけば、大きな間違いはないです。
紙の種類はマットコート紙が最も無難です。コート紙も同じくらい主流ですが、表面がツルッとして光沢が出るのでわずかに「安さ」「未来的」などのイメージに傾きます。マットコート紙は表面がサラッとしているので、比較的イメージに左右されず使いやすいです。
上質紙も一応主流の範囲ではありますが、塗装されていないナチュラルな手触りなので「自然派」「手作り」的なニュアンスに若干寄ります。実用面では、鉛筆で書き込みできるのが最大の売りで、そういう活用をしたい場合は便利です。
コート紙が合う内容で上質紙にする、あるいは上質紙がふさわしいものをコート紙で刷った時のギャップを考えたら、よくわからない場合には中間的なマットコート紙にしておくのが安全ということです。
なお、厚みと重さは比例しますが、紙の種類によって感触が変わります。ふわふわ系の紙は、みっちり密度のある紙と同じ重さの場合、厚手に感じられます。
ふわふわ系の紙(ファンシー系)は、やや「ぼこっ」とした手触りで、和み感・自然派イメージや遊びっぽさが出ますので、営業マンがスーツでビシッと渡すシーンには合わせにくいです。テカテカの特殊紙や、ホログラム加工なども基本は避けます。

ファンシー系や特殊加工を使って良い効果が出るのは、イラストレーターやハンドメイド作家などのクリエイター系と、「紙にこだわってますアピール」ができるグラフィックデザイナーです。
使用ソフトを選ぶ
印刷会社によって入稿データのルールが微妙に異なりますが、基本的には以下いずれかのソフトウェアで作成すれば大丈夫です。
プロ向け おすすめソフト
- Adobe Illustrator
- Adobe Photoshop
- Affinity Designer
- Affinity Photo
- CLIP STUDIO PAINT
アマチュア向け おすすめソフト
- Canva
- Adobe Express
- PowerPoint
- Inkscape
pdfに書き出しできるソフトがベターですが、jpgでも受け付けてくれる会社が多いです。
データの作成前に発注候補の印刷会社をいくつかチェックして、印刷可能なデータ形式を確認しつつ、入稿テンプレートがあればそれを使用するのが確実です。
補足:デザイン作成アプリを使う際の注意点
最近はデザインが作れるスマホアプリも出ているようですので、スマホで何か作るのに慣れている方はそちらでも良いでしょう。
1つ気をつけなければならないのは、前述の「どんな名刺デザインにするべきか」にある通り、逆効果になってしまうデザインも存在することです。
アプリを使用して、いざ手のひらの上に大量のテンプレートが出てくると、スワイプしているうちに圧倒されてしまい

色々ありすぎて難しいな〜…あっ、これ好き!
…と、感情でテンプレートを決めてしまう危険があります。パソコンの大きい画面で一覧するほうが、客観的な視点は保ちやすいです。
また、テンプレートには既に色・形・写真・フォントなどが配置されていると思います。その1つ1つの要素は、そのテンプレートで表現されている雰囲気のためにプロが狙って作ったものです。
つまり「色だけ自分のイメージカラーに変更する」とか「写真をまったく雰囲気の異なるものに差し替える」などの部分的な操作を行うと、全体のバランスが崩れることが多いです。
テンプレートを使うなら、なるべくアレンジせず素直に使うようにしてください。
デザインを作る
名刺はフォントが命
名刺デザインは、チラシやパンフレットに比べると「文字しかない」感じになります。いろいろな形や画像を入れてイメージを操作する余地が少ないのです。そうなると、フォント選択が名刺のイメージに直結します。


デザインは同じで、フォントも同じゴシック体の仲間なのに、1枚目は「30年前からあって規模が大きい会社」、2枚目は「ベンチャー系で若い人が多そう」に見えませんか?

えーっ、そうかなぁ?どっちでも同じじゃない?

…という方は、デザイナーに依頼することをおすすめします。
フォント選びで重視すべきことは、ウェイト(太さ)の種類数です。細い・太いの2種類しかないと、名刺以外でも汎用性が低いです。
ゴシック体 おすすめフリーフォント
- 源ノ角ゴシック( ≒ Noto Sans JP)
- M PLUS 1
- ZEN角ゴシック
- ひぐれゴシック
明朝体 おすすめフリーフォント
- 源ノ明朝( ≒ Noto Serif JP)
- ZENオールド明朝
- あおぞら明朝
なお、近年は「識字障害だと明朝体が読みにくい」「色覚型が異なると、赤と緑の区別が難しい」などの知識がデザインに活かされるようになってきています(ユニバーサルデザイン)。福祉に関連する事業の場合は特に、そこも意識できると尚良いです。
「分けて、揃える」と見やすくまとまる


あまりにも極端な作例ですが、1枚目の名刺を渡されたらあまり印象は良くないと思います。

「届いた封筒にノリがベタベタついていて、宛名書きも雑だった時」
と似た気分になります。
偏見ですが、1枚目のような名刺の会社はテカテカの光沢紙を使いがちです。感触がキュッとしていて嫌なので、総合的に名刺の攻撃力が高いです。
紙の種類は選ぶだけなのですぐ改善できますが、名刺デザインでこのような失敗を避けるために有効な考え方は「グループ分け」と「位置を揃える」です。
グループ分け
1枚目の名刺は、パッと見た時に以下の順番で情報が入ってきます。
山田太郎 → 代表取締役 → 株式会社システマチック・サービス → 住所 → ホームページ → メールアドレス → 電話番号
対して2枚目の名刺は、こうなります。
山田太郎 → 代表取締役 → 株式会社システマチック・サービス → その他の情報
名刺交換をした瞬間には必要ない情報をグループ化して小さめ・薄めにまとめることで、「ここは最重要ではない=後で見ればいい」と分かり、相手の脳の負荷が減ります。
基本的には、会社名・役職・氏名を大きくメインに据え、住所や連絡先などは補足的な扱いにすると見やすいです。
位置を揃える
文章の頭位置を揃えます。横書きの場合は左揃え、縦書きの場合は上揃えです。
中央揃えにする場合もありますが、文章の長さに差があると不自然になったり、左揃えと比べると読みにくくなりがちで、やや上級者向けです。
デザインのレイアウトによって、グループ分けに関係なく全ての要素を揃えたり、逆にグループごとに揃え位置を変えたりします。
また、紙全体にみっちり文字が入っているよりも、適度な余白がある方が見やすいです。余白の大きさも上下や左右で揃えるとスッキリします。

ただし「全ての要素を揃えなければ」と考える必要はありません。特殊な意図がない限りは、揃っていることより最終的なバランスのほうがより大事です。
まとめ
名刺デザインを自分で作る際の注意点やコツをまとめました。
復習として、大事なポイントを再掲します。
本記事のまとめ
- 名刺デザインにはビジネスとの相性があり、業種や訴求によって「良いデザイン」は変わる
- 情報量と表現したいイメージが噛み合わないときは、デザイナーの出番
- こだわりがなければ、55×91mm/マットコート紙/180kgで作成する
- 印刷会社を事前に調べて、入稿用テンプレートを探す
- フォント選び/グループ分け/位置揃えが、名刺デザインの肝
私はデザインを作るのが楽しいですが、楽しくなくて辛い方は代わりにやりますので、お気軽にご相談くださいね。