広報や総務の担当者にとって、資料作成は避けて通れない業務です。しかし、せっかく時間をかけて作ったのに、上司から「もう一度直してきて」と言われることも少なくありません。

せっかくスライドを作ったのに
『もっとわかりやすくして』って言われちゃった…

載せたい情報が多すぎて、
これ以上どう工夫すればいいのかわからない…
「この文字を赤にして」「フォントをこれに変えて」といった具体的な指示ではなく、「なんか分かりにくい」「もう少し整理して」といった抽象的な要望だったりします。一度や二度ならともかく、毎回のように直しが入ると大きなストレスですよね。
なぜプレゼン資料が「分かりにくい」と言われるのか
このようなお悩みの原因は、そもそも「情報整理の方法」を誰も教えてくれないことにあります。
- 学校や、会社・研修では習わない
- 頭の中で行う抽象的なことなので、言語化がかなり難しい
- 「情報整理ができれば分かりやすくなるかも?」という発想になりにくい
(デザインを改善すれば良くなるかも…と思いがち)
AIやテンプレートで資料の見た目は作れる時代ですが、「何を・どのように伝えるか」整理し、適切な文脈を設定するのは人間の仕事です。
当記事では、プレゼン資料や営業資料のデザインを作る以前に必要な「情報整理の方法」を詳しく解説します。
東城この方法は、デザイン実務経験8年の私が「ものすごい量のテキスト」や「まとまっていない情報」を整理して、見やすいデザインを作ってきた経験から導き出されたものです。
文字だらけの資料を何とか全部読んで、情報を切り分けて分類・整理し、わかりやすいデザインに変換する……この「情報を整理して、ビジュアルに変換する」を、私は数えきれないほど行ってきました。
そんな仕事をたくさんこなしているうちに、大量の情報を「見やすく・わかりやすく」伝えるための方法論が見えてきました。この記事では、それを「情報整理の3ステップ」と名付け、実際の経験から紹介します。数百件の案件で再現性を確認してきた方法ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
デザインを改善するだけでは伝わらない理由
資料をつくるときには、デザインの前に「情報整理」ができていなければ、いくら美しいレイアウトでも分かりやすさは改善しません。
例えば、以下のようなスライドがあったら「分かりやすい」でしょうか?

ぱっと見の印象は美しいけれども、肝心の中身は何が言いたいのか、一瞬では伝わらないと思います。
なぜなら、上記のスライドは情報を整理しないままデザインしているからです。
東城というより、デザインには「情報整理」が含まれていると私は思います。
では、以下のスライドはどうでしょうか?

見た目がおしゃれとは言いがたいけれど、内容はかなり伝わりやすいと思います。しかも、ぱっと見の情報量が多く見える1枚目のスライドよりも、実際の情報量が多いです。
お察しの通り、こちらのスライドは情報整理だけ行って、装飾はほとんど施していません。
おしゃれなデザインテンプレートを使ったり、デザイン会社のデザイン事例を真似するのも良いですが、それだけでは「分かりやすい資料」にはならない、ということです。
逆に、きちんと情報整理をした上でテンプレートや参考デザインを取り入れると、非常に分かりやすく、かつ美しい資料ができます。その結果「もっと分かりやすくして」とは言われなくなり、一発でOKが出ます。
では、その「情報整理」とは具体的にどのように行うのでしょうか?以下で解説していきます。
デザイン前にやるべき、情報整理の3ステップ
伝わる資料を作るための「情報整理」は、以下の3ステップで行います。
バラバラで大量の情報を、カテゴリーごとに整理します。
「誰に」「何を」伝えるのかを決め、要点を絞り、構成を練ります。
文章→箇条書き→表・図解と変換することで、理解スピードが大きく変わります。
この流れを踏めば、複雑な情報でもシンプルで伝わる資料に変わります。
ステップ1|情報をグループ分けする
まず前提として「もらった情報をそのまま全部並べない」という意識が最重要です。
東城原稿の形式に縛られてしまった時点で「分かりやすい」は実現できない!
これくらいの意識でいきましょう。
原稿は「文章の内容や数値を変えてはいけないが、表現方法や順番は変えてもいい」のです。
さて、情報整理の最初のステップは「分類」です。バラバラの情報をカテゴリーごとにグループ化(種類分け)します。グループにまとめることで、たくさんの情報を見やすくまとめる土台ができます。
例を挙げて見ていきます。
原稿例① 社内研修報告
先日の接客マナー研修には社員の8割が参加し、参加率は例年よりも高くなりました。来月以降はさらに若手社員の参加率を上げるために、研修時間を短縮して午後に開催したらどうでしょうか?そしてアンケートの中には「内容が基礎的すぎた」という声もありましたので、今後は実務に直結したテーマにするべきだと思います。
↑もし、この文章が「原稿」として送られてきたとしても、そのままコピペしてはいけません。
文章自体がわかりにくければ、いくら「余白」「フォント」などを工夫して綺麗なレイアウトにしても、わかりにくいままです。
読み手が「で、何の話だったっけ?」と混乱しないように、内容を分解して整理します。
整理例①
事実:先日の接客マナー研修には社員の8割が参加し、参加率は例年よりも高かった。
感想:アンケートには「内容が基礎的すぎた」という声があった。
提案:①今後は実務に直結したテーマを選ぶ。②若手社員の参加率を高めるために、午後開催・短時間化を検討する。
同様の例をもう一つ見ていきます。
原稿例② 営業施策の振り返り
先月の展示会では新規リードが120件獲得できました。ただ、営業担当からは「その後のフォローで顧客が情報を欲しがっているのに対応が遅い」との声も出ており、このままではせっかくのリードが無駄になってしまう可能性があります。ですので、次回からは展示会終了後すぐにメールを自動配信する仕組みを導入するべきと部署内で意見が出ています。とはいえ、目標値を大きく上回る成果が出ているので、結果的には成功だと思います。
繰り返しですが、「これが原稿です!」と渡されても、そのまんまコピペする義務はありません。わかりやすく分解して表現します。
整理例②
事実:先月の〇〇展示会/新規リード120件獲得、目標値を大きく上回った/成功!
↓
課題:
顧客…展示会後に情報を求めている/フォローが遅いと熱が冷めてしまう
営業…懸念「フォローの遅れでリードが無駄になる」
↓
改善:展示会後フォローを強化するため、自動メール配信の仕組みを入れたい
グループ化のコツ
情報を分類するためには、いったん1つ1つの情報や文章を全部バラバラにして並べてみましょう。
それを眺めて、以下のように情報をまとめられないか考えます。
- 共通点でまとめられないか?
- 同じことを言っている重複部分はないか?
- 同じ軸に並べられるものはないか?
| 共通点でまとめると? | |
|---|---|
| りんご、みかん、ぶどう | 果物 |
| 上司Aさん、講師Bさん、新人賞Cさん | 研修での登壇者 |
| アンケート結果、営業部の意見、クレーム | 課題 |
| 重複部分をまとめると? | |
|---|---|
| 土日祝は休み、受付は平日9時〜17時、年末年始は休み | 受付:平日9時〜17時(年末年始除く) |
| 代表者挨拶、地域の〇〇であるために、我々の目指す姿 | 1つの文章に統合 |
| 同じ軸に並べると? | |
|---|---|
| まずは無料お見積り、アフターサポートも充実、専任者がご提案 | 導入の流れ |
| 大規模発注はご相談ください、1,000セット標準〇〇万円、お試し用300セット | 価格表 |
| A社からの高評価、B社からの営業担当者への激励、ECサイトのレビュー | お客様の声 |
東城資料内で実際にそう書くべきかは後で考えますが、
ページ構成を考えるためにも、まず一定のグループ分けが必要です。
1つ1つの短縮文字数は大したことがなくても、これらが積み重なっていくことで情報量はそのまま&文章量は30%以上減ることもあります。時系列や論理構造もまとまりますので、これだけでもだいぶ資料がすっきりします。
ステップ2|優先順位・順番を決める
優先順位の考え方
「今回はこれを優先で伝えよう」と決めると内容の軸が定まり、ぐっと分かりやすくなります1。

削れる情報なんてない、全部重要だ!
…という場合でも、最低限はメリハリをつけなければ情報がボヤけて、全体がよくわからなくなってしまいます。「全てぼやけた結果、30%しか伝わらない」よりは「一番言いたい60%は伝わった」のほうがいいはずです。
今回の資料が「誰に向けて」「何を言いたいのか」考えましょう。
いくつか例を挙げます。資料スライド以外のチラシやパンフレット、ホームページ等でも使う考え方です。
| 誰に向けて | 何を言いたい |
|---|---|
| 新規開拓先 | 弊社の商品を一度試してください |
| 地域のファミリー層 | 週末のイベントに来てください |
| 就活生 | 弊社で働くことに興味を持ってほしい |
次に、そのデザインを届けたい人は何を知りたがっているか、想像します。
- どんな情報や画像があったら興味を惹かれるか?
- 「興味はあるけど不安」な人は、どんな情報があれば安心するか?
- 読み手にベネフィット(いい体験)をもたらすために、何を工夫しているか?
「まずい、今の企画のままでは来場者に興味を持ってもらえるポイントがない!」と分かれば、企画から変更する必要が出てくるかもしれません。しかし、表に出す前の段階で改善点に気付けるのは良いことです。
読み手に喜んでもらえそう・納得してもらえそうな切り口が決まったら、その情報を「メインテーマ」として据えます。そして、メインテーマを補強しない情報は削る・小さくする決断をします。
どうしても必要な情報は入れてもいいですが、並列のサイズで扱うと伝わりにくい資料になってしまいますので、あくまで補足扱いにしてください。
東城最優先ではない細かい情報は、先ほどの「グループ分け」で文量をコンパクト化し、文字サイズも小さくしましょう。

スライド構成の考え方
プレゼン内容や話す状況、聴衆の属性、商材などの組み合わせによって、最適なスライド構成は変わります。
「わかりやすい話し方=結論から話す」という認識が一般的ですが、これは「PREP法」という1つの情報伝達フレームワークに過ぎず、どのような状況でも最適なわけではありません2。
なので「この構成がベストです」と一言で括ることはできませんが、いくつかの考え方を紹介します。
- 資料の概要をタイトルで短く示す
- スライドが長い場合(おおむね30P以上)は「目次」を入れる
- まず「現状の課題・背景」を示してから、具体的な提案や商品名などを出す
- データや詳細な情報は、主張をした後に「理由・根拠」として扱う
- 最後には「具体的に何をするか」行動を提示する(結論をもう一度まとめる、お問い合わせ先の記載など)
最初に結論ではなく「現状の課題・背景」を置くのは、商品やサービスを売るときに取られる「新PASONAの法則」や「DESC法」に則ったスタイルです34。まず聞き手に「自分に関係がある話だ」と思ってもらい、説得力を高めるための仕掛けで、LP(ランディングページ)や営業資料ではよく見られます。なお、これらの他にも「AIDMAの法則」「QUESTの法則」など、色々なフレームワークがあります5。
東城プレゼン資料の内容や聞く人の状況を考えて、最適なフレームワークを選びましょう。
ステップ3|図形やアイコンに置きかえる
図や形を添えることで、文章だけよりも全体の概念を早く理解してもらえます。パワポの図形やフリー素材アイコンを使った簡単な図解でも効果があります。
そのままでは読みにくい長文も、先ほどの「グループ分け」で内容を分解して、一度箇条書きにしてみましょう。その箇条書きを、さらに「表」「グラフ」や「アイコン」に変換します。

図にすることで、論理的なつながりや流れの間違いにも気づきやすくなるので、一石二鳥です。
上記「情報整理の3ステップ」の流れを踏むことで、読み手は整理された情報を楽に受け取れます。「わかりやすさ」を実現するには、デザイン以前の情報整理が重要なのです。

なんとなく分かったけど、慣れないと難しそう…
上達のためのコツってあるのかな?
東城ありますよ。これから解説していきます!
この「情報整理の3ステップ」を実際に実行するためには、「抽象と具体の往復」と「言語化」が重要です。
情報整理の本質は「抽象と具体の往復」
「抽象・具体」とは何か
私は、デザインの本質とは情報整理であり、情報整理の本質とは「抽象と具体の往復」だ、と考えています。
抽象化は「まとめて言うこと」、具体化は「具体的な例を挙げたり、形として表すこと」です。
そして、抽象と具体の往復とは「情報を構造化すること」です。

最初にお見せしたスライドが分かりにくかったのは、情報が構造化されていないからです。

対して、2つめにお見せしたスライドは、それぞれの要素が互いに「抽象と具体を往復」できます。これが分かりやすさの肝です。


「情報整理の3ステップ」とは、①情報をグループにまとめて(抽象化)、②優先順位を考え、③必要なデータを適切に表現・補足(具体化)することで、情報を構造化する手順なのです。
- 抽象だけでは「具体的に何をするのか」分からない
- 具体だけでは「これは結局何のための話か」分からない
具体と抽象の両方がバランスよく提示されていると、わかりやすくなります。情報を入れ子構造に整理することを意識してみてください。
抽象と具体の往復で、情報量をコントロールできる
抽象と具体の往復をするおまけ効果として「最低限の情報を損なわずに、文章量を減らせる」「発想の枠を広げて、文章量を増やせる」があります。これを両方向に使えると大変便利です。
いくつか例を挙げます。
| 具体 | 抽象 | もっと抽象 |
|---|---|---|
| ・服装はスーツ ・髪型は清潔感のあるもの ・爪は短く切りましょう | 身だしなみを整えましょう | ビジネスマナーは大切です |
| ・今期の総売上額は〇〇億円 ・粗利益は〇〇千万円 ・前年比〇〇%利益率アップ | 今期は前期と比べて業績が向上している | 当社はここ5年で〇倍の規模に成長しました |
| 当社の主力商品は以下の3つです ・〇〇プロダクト ・△△ソリューション ・××コンサルティング | 当社は、〇〇を△△化する分野に強みがあります | 当社は〇〇業です |
だんだん視点がミクロ(小さい範囲)からマクロ(広い視野)に広がっていく、あるいは逆から読めば視点がフォーカスしていくような感覚になると思います。
この感覚を自由に使いこなせるようになると、

この資料の中では、この情報はそこまで重要ではないから、具体例はいちいち書かなくていいか。
抽象度を上げた表現で1行だけ書いておこう。

この商品は〇〇の人が対象だから、具体例の中の「△△な体験」はあまりしなさそう。そのかわり、「××な体験」の具体例を増やそう。
など、原稿のボリュームや方向性が(ある程度は)自分でコントロールできるようになります。これはページタイトルや見出しを作るときにも、とても役に立つスキルです。
言語化トレーニングで伝わりやすく
抽象と具体の往復を行うにあたっては「言語化」が非常に重要です。
あいまいなイメージや雰囲気を、的を得た言葉として表すことができれば「わかりやすい」に近づきます。具体的な例を挙げてみますので、ぜひ真似してみてください。
いろいろなグループ名をつける
情報整理の3ステップで最初に行う「グループ化」のとき、「カテゴリ・属性」をたくさん考えましょう。これが、アイコンやイラストを入れたり、配色を決める時の発想源になります。また、いろいろな分け方を思いつける=抽象化の力が上がると、情報整理がしやすくなります。
| カテゴリ・属性をたくさん考える | |
|---|---|
| りんご、みかん、梨 | 果物、植物、甘い、丸い、冬、「ヘタ」がある、〇〇さんの好物 etc. |
| たぬき、ライオン、カピバラ | 哺乳類、四足歩行、茶色っぽい・ヒゲが生えている、野生に生息している、ちょっと珍しいイメージ、普通は飼わない・食べない etc. |
| A社から高評価、B社から激励、ECレビュー | 人の気持ち、声・手紙、ポジティブ系・嬉しい、事実、社会からの評価、増やしたいもの etc. |
そもそも何の話なのか/具体例を思い出す
「これって、まとめると何の話?」または「具体的にいうと?」と自分に問いかけて、抽象度を上げ下げしてみましょう。
| 具体的な情報 | まとめると? | もっとまとめると? |
|---|---|---|
| ・今期の総売上額 ・今期の粗利 ・株価の推移 | 今期の業績の話 | 当社の現在の状態の話 |
| 10歳以上の柴犬におすすめのフード ・〇〇フード ・△△マニア ・ヘルシー×× | シニア柴犬の餌の話 | 犬の飼育方法の話 |
| ・情報整理の3ステップ ・抽象と具体の往復 ・言語化が大事 | 分かりやすい資料作りの思考法の話 | 仕事に役立つ話 |
まとめ
プレゼン資料作りで最も大切なのは「情報整理」です。見た目を整える前に「情報整理の3ステップ」で内容を整理しましょう。
東城読み手に「わかりやすい」と感じてもらえる資料は、見た目の装飾ではなく、情報整理の技術から生まれます。
- 会議がスムーズに終わり、意思決定が早くなる
- 質問や確認の回数が減る
- 社外にも見せやすい資料ができる
→組織全体のコミュニケーションが円滑になります。
弊事務所は広報資料、企画書、会社紹介パンフレットなどに幅広く対応可能です。原稿がまとまっていなくても、情報の整理から承ります。お見積もりは無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。
脚注
- Vol.1: デザイン迷子にならないために、 最初に整理しておくべきこと ↩︎
- 結論から先に言ってはいけない場合がある ↩︎
- LP構成3つの鉄板パターン【これだけ知っていれば十分です】 ↩︎
- 【プレゼンの構成】基本の流れや必勝パターンをマスターして、よりよいプレゼンを目指そう! ↩︎
- 構成やフレームワークを理解して効果的なLPを作ろう ↩︎

東城 優花
BUNデザイン事務所
グラフィック/Webデザイナー・漫画家・イラストレーター。
デザイン専門学校を卒業後、教育系ベンチャー企業、デザイン事務所でのデザイナー・アートディレクター勤務を経て独立。
1993年生まれ。夫と二人暮らし。ヘヴィメタル音楽が大好き。
![[埼玉県狭山市] BUNデザイン事務所|印刷物・ホームページ・マンガ](https://bun-design-office.com/wp-content/uploads/2024/08/bun-logomark-logotype.png)
